『甲南大の学生がトランスジェンダーへの偏見なくそうと 動画作成』NHK神戸放送局による放送およびその記事に関する公開質問状への回答

私たちが3月10日に、甲南大学有志による動画をめぐってNHK神戸放送局、神戸新聞社、甲南大学、大阪府府民文化部人権局に宛てて出した公開質問状に対して、3月25日の期日までに、NHK神戸放送局と神戸新聞社から回答が来ましたが、甲南大学と大阪府府民文化部人権局からは回答が来ませんでした。

 まずもって私たちは、市民からの質問状を無視した甲南大学と大阪府府民文化部人権局の不見識に対して強い抗議の意思を表明します。甲南大学は私立大学とはいえ私学助成金という形で税金が投入されており、また大阪府府民文化部人権局は言うまでもなく公共の自治体の一機関であり、市民の払う税金によって運営されています。にもかかわらず、納税者である市民からの真面目な公開質問状に対してそもそも回答をしないという選択をしたことは極めて遺憾です。

 NHK神戸放送局と神戸新聞社はたしかに私たちの公開質問状に対して回答を寄せましたが(以下に掲載していますので、参照してください)、ごく短く、まったく無内容のものでした。




【NHK神戸放送局からの回答について】

 まずNHK神戸放送局の回答は、「ご指摘いただいた件につきましては、さまざまな意見があることは承知しています」とあります。NHKは公共放送であり、法律にのっとって設立・運営され、私たちが支払う受信料でまかなわれています。したがって、多様で対立した意見が存在している論争的なテーマにおいては、異なった意見の紹介にも一定の配慮がなされてしかるべきです。しかしながら、このトランス問題に関しては、ただ一方の意見のみが紹介され、あたかも市民の間にはそのような意見しかないかのように報道がされ続けています。

これは、公共放送としてきわめて不正常なことです。しかも、NHK神戸放送局は今回の回答で「さまざまな意見があることは承知しています」と回答しているのですから、異なったさまざまな意見の存在を承知しながら、特定の意見のみを放送したことになります。これは重大な問題ではないでしょうか。 NHK神戸放送局は今回の回答では、「ご指摘も踏まえて、よりよい放送を目指してまいります」とありました。私たちは、NHKは公共放送として自らの発した言葉に責任を持つべきと考えます。今回の質問状と回答を踏まえて、NHK神戸放送局およびNHK全般が今後、このトランス問題に関して、女性や子どもの人権と安全を懸念する立場も紹介することを強く求めます。


【神戸新聞社からの回答について】

 次に神戸新聞社の回答ですが、「トランスジェンダーについて、出生時の性別と自認する性別が異なる人との定義は、一般的に用いられているものです。制作者側の定義と相違する点があったとしても訂正等は考えておりません」と答えています。

しかし、トランスジェンダーとは何かという定義問題をめぐって混乱が生じており、このことが法(自治体の条例を含め)や制度、施設の運用等において重大な問題を引き起こしているのです。人や団体、機関によって、トランスジェンダーの定義がまったく異なっており、法や制度、さまざまな文書や動画などが「トランスジェンダー」と言った場合に、それがいったい誰を対象とするものなのかわからない状態になっています。そのような状況のもとでどうやって、「トランスジェンダーへの偏見や差別」をなくすことができるでしょうか。

 神戸新聞社は、一般になされていると称する定義と、貴新聞が肯定的に紹介した動画の制作者における定義とが大きく食い違っている場合、当然、定義に違いがあることを読者にきちんと伝えるのが、公器たる新聞社としての当然の責務です。その当然の責務を放棄して、今回のように開き直ることは、きわめて遺憾なことです。

 神戸新聞社の回答は、私たちのその他の質問に対しては、「人権啓発動画の内容に関するご指摘で、当社においてはご回答いたしかねます」と答えています。しかしながら、神戸新聞がその紙面でこの動画を肯定的に紹介したのですから、その動画に重大な不備や問題がある場合、当然、肯定的に紹介したメディアとしての責任が問われることになります。それとも、実際に起きていない差別事件を捏造して、あたかも一般女性がトランス差別者であるかのように描き出すことは、重大な不備や問題ではないということでしょうか。

 ご存じのように、日本は世界的に見ても女性の地位が著しく低く、女性の賃金水準や女性議員の数などのわかりやすい指標で見ても、主要先進国の中で最低ランクに属します。このように女性差別が深刻な国で、市井の一般女性を差別者扱いするような動画を肯定的に紹介することは、女性差別を助長することに他なりません。この深刻な問題に答えなくてよいとみなした神戸新聞社に改めて強い抗議の意思を表明いたします。

2022年3月31日

NO!セルフID 女性の人権と安全を求める会一同


公開質問状の内容につきましては、こちらをご覧ください。

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