立憲民主党の性同一性障害特例法改正案に反対し、強く抗議します

 立憲民主党は、2024年6月11日、「性同一性障害特例法改正法案」を議員立法として衆議院に提出しました

 これは、性同一性障害特例法(以下、特例法)における性別取扱いの変更に関わる主要な条件をすべて削除し、性同一性障害の定義さえ変更するものであり、事実上、性同一性障害特例法を無効化するものです。同党の改正案によると、その第一として、「未成年の子なし要件」が削除されることが明記され、第二の1として「生殖不能要件」と「外観要件」の両方を削除することが明示されています。さらに第二の2として、性同一性障害者の定義から、「身体的に他の性別に適合させようとする意志」に係る部分を削除し、さらに医師の診断書の記載事項の例示から「治療の経過及び結果」を削除するとしています。

 これらの改正は、特例法の根幹を否定し、女性と子供の権利を著しく侵害するものであり、私たちはその改正案に断固反対するとともに、そのような改正案を出した立憲民主党に強く抗議するものです。以下、簡単に説明します。

改正案は特例法の根幹を否定する

 特例法は、単に自分の性別を法的に変えたい人のための法律ではなく、著しい身体違和を持ち、それゆえに自己の身体を他の性別に類似したものへと不可逆的な形で変えた人が社会生活をスムーズに送れるよう、当時の国会において満場一致で制定されたものです。にもかかわらず、「身体的に他の性別に適合させようとする意志」を持つという性同一性障害者の定義の中心をなす規定を削除してしまい、昨年10月に最高裁で違憲判定が下された「生殖不能要件」のみならず、特例法の核心でもある「外観要件」をも削除することになれば、同法は、制定時における立法趣旨とまったく異なったものに変質してしまうことを意味します。それは、特例法の根幹を否定するものです。また、「未成年の子なし」要件も、未成年の親の「性別」の法的取り扱いが変わることによる社会的混乱や子供の不利益の発生を避けるためのものです。

 これらが削除されれば、性別取扱いの変更を家庭裁判所に申し立てる上での条件としては、医師の診断だけが残ることになります。しかし、現在、たった1回の診察や数十分の診察で安易に「性同一性障害」の診断書を出す医者やクリニックは後を絶たず、それは何ら歯止めの役割を果たしていません。さらに、その医師の診断に関しても、立憲民主党の改正案は、それを厳格化するのではなく、逆に、医師の診断書の記載事項の例示から「治療の経過及び結果」を削除するとして、いっそうの緩和をめざしています。

 このような全面的な規制緩和は、それまで特例法の種々の条件をクリアすることで一定の社会的信頼を得ていた性同一性障害の人々にとっても大きな不利益になるでしょう。

改正案は女性と少女の人権と尊厳を侵害する

 「生殖不能要件」のみならず、「外観要件」も削除されれば、ペニスを持った「法的女性」が大量に発生することが予想されます。そうなれば、これらの人々が社会的にも「女性」として扱われ、女性トイレのみならず、女性用の更衣室、浴室、病室、シェルター、刑務所などの女性専用スペースにも当然入ってくることが十分に予想されます。なぜなら、現行の特例法に基づいて法的性別の取扱いの変更を終えた人たちは、すでにそれらのスペースに入っているからです。

 立憲民主党の改正案には、これらの女性専用スペースの運用に関する新たな規定は何もなく、また別途、女性専用スペースに係る独自の法案を作成しているわけでもないので、同党の改正案が成立すれば、すべての女性専用スペースにペニスを備えた「女性」が入れるようになるでしょう。たとえ、個々に浴場やプールの管理者が、厚労省の通知に基づいて「身体的特徴」で分けたとしても、そのような区別が「差別」だとして訴えられるリスクは常に存在するし、司法がそのような区別を妥当だと判断する保証もありません。

 そのような事態になれば、女性と少女の人権と尊厳が著しく侵害されるのは明らかです。諸外国ではすでに、「外観要件」をなくして(さらに一部では医師の診断書という手続きさえなくして)、その人の自己申告に基づいて性別を変えられるようになったことで、男性器を備えた「女性」が大量に生まれ、それらの人々が女子刑務所や女性用更衣室などの女性専用スペースに入ってくる事態になっており、レイプなどの深刻な性暴力がすでに多発しています。またたとえレイプなどの性犯罪にまで至らなくても、ペニスを備えた人物と同じ空間で着替えやシャワーの利用を強要されることは、著しい人権侵害であり、女性の尊厳を否定することです。それは性暴力を誘発し、すべての女性と少女を危険にさらすものです。

 以上の点からして、立憲民主党の改正案は絶対に許容できないものであり、私たちはそれに断固反対し、強く抗議するとともに、その速やかな撤回を要求します。

 諸外国において性別取扱いの要件を安易に緩和したことで多くの問題や事件が発生している事実については、すでに有権者や市民から多数、立憲民主党にも寄せられているはずなのに、そのことから何も学ばず、知ろうともせず、あるいは、まったく無視する態度をとっていることに、私たちは強い憤りを感じています。このような政党が与党になれば、他のすべての問題に関しても、市民を無視し、女性をないがしろにし、子供を危険にさらす政策を実行することは明らかです。私たちはそのことに深い憂慮と懸念を表明するものです。

2024年6月17日
No!セルフID 女性の人権と安全を求める会
代表 石上卯乃

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