経産省トイレ訴訟の高裁判決を支持します。最高裁は国側の主張の正当性を認め、女性の人権を守ってください

最高裁判所判事 今崎幸彦 様

 国民のために重責を負って裁判をおこなってくださることに感謝申し上げます。私たちは「No!セルフID 女性の人権と安全を求める会」という市民団体です。

 今崎様が担当判事となられる、行政措置要求判定取消等請求事件(以下、経産省トイレ訴訟)の最高裁判所判決が、本年7月11日に行われます。

 私たちは、以下の理由により、2021年5月の東京高等裁判所における、「経産省としては他の職員が有する性的羞恥心や性的不安などの性的利益もあわせて考慮し、原告を含む全職員にとっての適切な職場環境を構築する責任を負っていることも否定しがたい」としてトイレの使用制限は違法ではないとした判決を支持し、この判決内容が最高裁でも認められることを求めます。

1.女性の人権の抑圧をしてはならない

 高裁判決が示したように、考慮されるべきは原告の人権のみにとどまりません。その場を共有する女性たちが、上長の命令により、性的羞恥心、性的不安をもって日々を送ることを余儀なくされるのであれば、それは人権の抑圧といえます。

 第二審判決においても、原告が性自認に基づいた性別で社会生活を送ることは、「法律上保護された利益」と位置づけられました。そして、そうであるならば、「女性が女性専用のトイレを使用する」こともまた、女性の法的利益として認められるべきです。女性たちはこの職場において女性用トイレを使用する当事者です。司法はこの当事者を蔑ろにすべきではなく、その法的利益を毀損することのないように尽力すべきです。

 また、今月施行された「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」の第12条においても、「この法律に定める措置の実施等に当たっては、性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとする」とあります。訴訟の提起が同法の施行以前とはいえ、原告が、性自認を理由に法益を主張するのであれば、これに対しては、当然、同法12条の規定をもって判断することもまた必要といえるでしょう。

2.性自認によるトイレ等の使用は、社会的コンセンサスを得ていない

 個人の事情について踏み込んだことを述べるのは躊躇われますが、公表されている第一審の判決にあるとおり、本件の原告は、性同一性障害と診断されていますが、戸籍上は男性であり、性別適合手術も受けていません。職場の女性が原告を同性とは見做せないとしても無理からぬことであり、また、そのような前提に立っての第二審判決と考えられます。

 ところで6月16日の口頭弁論の後の毎日新聞の報道では「人事院の判定時には、性自認に沿ったトイレ利用を認めるべきだという社会的な広い理解はなかった」ことを国側の主張と報じています。https://mainichi.jp/articles/20230616/k00/00m/040/250000c

 記事中に「人事院の判定時には」という留保が記されていることで、まるで現時点では性自認に沿ったトイレ等の使用に社会的コンセンサスが得られているかのような読解が可能になっています。しかし、それでは一般社会の通念を読み誤ることになります。一般社会は、トイレが生物学的性別または戸籍上の性別で峻別されることを求めています。

 新宿区の歌舞伎町タワー2階のオールジェンダートイレの顛末については、広く報道されているとおりです。当初から、女性の使用者がいないかとジロジロと眺める男性が続出し、その対応で警備員が付いて男性の使用の際は小便か大便かを問うて使用者を分けるようになり、その後は結局、パーテーションをつけて性別で区分をするようになった、というものです。

https://www.j-cast.com/2023/05/19461870.html?p=all

 また、小田急電鉄相模大野駅のトイレについて、駅員が「”自称女性の男性”が女子トイレに入るのを止めることは出来ない」と利用者である女性に告げたことが広まると、危険性を指摘する声がインターネット上で噴出し、地方議員からも懸念が表明されました。その後、別の問合せ者に対して小田急電鉄から「“女装した男性が女子トイレに入るのを見たら、すぐ駅員に通報してほしい”“多目的トイレに案内し、拒否した場合は駅員から警察に通報する”“LGBT法案があるから対応できないなんていうことはあり得ない”」という回答があったそうです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/67cf85d025a52ed91a8ae689b560a3072b251de4

 このように、性別で分けられたトイレはまさに国民が求めているものであり、とくに女性は性別で分けられたトイレを必要としています。かつて共同トイレが主だった頃は、女性は性被害や性的嫌がらせを受けることが絶えませんでした。1954年の文京区小2女児殺害事件がおきた一因は、トイレが男女共同だったことでした。現代において、性被害の記憶があるため女性専用トイレが失われたならば社会生活を送れなくなる女性は多数存在します。トイレ等の使用は性別で分けられているべきという社会通念は現在もなお確固たるものであり、最高裁判決においてもぜひとも尊重されるべきと私たちは考えます。

3.国側が違法とされたならば、先行判例として多大な影響を及ぼす

 6月16日の毎日新聞の報道では、「毎日新聞が中央省庁の1府13省庁に取材したところ、経産省以外にも、文部科学省と防衛省の2省で、出生時の戸籍の性と性自認が一致しないトランスジェンダーの職員から、トイレ利用について相談があったという」とありました。

https://mainichi.jp/articles/20230616/k00/00m/040/250000c

 今回の裁判の結果次第で、それらの人たちもまた、性別適合手術も戸籍変更も経ないまま、性自認に沿ったトイレ等の使用を求める裁判を起こすことも予想されます。

 法的性別の変更を定めた唯一の国法である「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」では、法的性別の変更の条件を具体的に定めています。しかしながら、その手続を経なくても性別を変更したと同等にみなす動きがあり、本件もそのうちの一つと言えます。省庁で認められるのであれば、一般企業には尚更大きく波及することは明らかです。そうなった場合、既に述べたように、女性の法益という問題を無視して進めることは、女性への重大な人権抑圧となります。

 本件は一個人の権利闘争としてだけ見るべきではありません。何をもって人間の性別とするかという、性別の概念についての重大な司法の判断となり、社会に多大な影響を与えるものとなります。ここにおいてどうか、国民全体の生活と人生を見渡してのご判断をお願い申し上げます。

 以上、女性の人権と安全を求める立場から意見を述べました。

 原告と女性のお互いの法益を尊重し、トイレ等の使用に関する社会的な意識も考慮するのであれば、第二審の判決を維持することが最も適切であると私たちは考えます。どうか最高裁におかれましても、第二審判決を支持し、これをもって結審としてくださいますよう心よりお願い申し上げます。

2023年6月30日

No!セルフID 女性の人権と安全を求める会

共同代表 石上卯乃、桜田悠希

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