「甲南大学の学生が作成したトランスジェンダー関連の動画に関する大阪府府民文化部人権局への公開質問状」

大阪府府民文化部人権局局長 三ツ石 浩幸 様

 学校法人甲南学園名で2022年2月17日に報道関係者各位に宛てて発表された文章(https://web.archive.org/web/20220217111435/https://www.konan-u.ac.jp/news/wp/wp-content/uploads/2022/02/public-relations-department-limited/20220217pressrelease.pdf ウェブアーカイブ)によりますと、同学園の甲南大学社会学科の学生有志が大阪府府民文化部人権局(人権擁護課)と共同研究を行ない、人権啓発動画「寄り添うことば・引き裂く言葉〜SNS で排除されるトランス女性~」を完成させたとのことです。

 また、大阪府の公式ホームページ上においても、令和3年度の事業として、「インターネット上の人権侵害の解消に向け、差別的な書き込みに対処するには、どのような啓発が効果的かについて」、甲南大学を含む6つの大学と共同研究を行なったとあります(https://www.pref.osaka.lg.jp/jinken/internet/symposium03.html)。また、この動画は大阪府の公式You Tube チャンネルでも公開される予定とのことです。大阪府の公式の部局が直接に協力し、大阪府の公式チャンネルで公表することを予定した動画である以上、その内容について当然、府の機関としての公式の責任が問われることになります。そこで、以下、いくつかの質問を行ないますので、公的機関として責任ある回答をお願いします。

1.貴人権局は「トランスジェンダー」あるいは「トランス女性」をどのように定義されていますか? 性同一性障害特例法の対象となる方だけではないと認識しておられるのでしょうか? 私たちはもちろん、誰であれ不当な差別を受けることがあってはならないと考えていますが、「トランスジェンダー」ないし「トランス女性」としてどのような方が想定されているのかがわからなければ、差別の被害者が誰なのかもわからないはずです。人権局として認識している定義をご提示ください。

2.この動画について報じたNHKの放送および記事(https://archive.ph/20220305231157/https://www3.nhk.or.jp/lnews/kobe/20220228/2020017271.html ウェブアーカイブ)によりますと、動画内で、トランス女性に対する「差別的書き込み」「誹謗中傷」の事例として、以下のものが判読可能な形で列挙されていました。

わきまえない桜もち 同じ学部の長浜ほのかくんが女子トイレを使ってた。怖くてもう女子トイレを使えない。まじキモイ死んでほしい

むいむい 身体が男なのに女子トイレに入って来るな!! 氏ね!!!

まいまい 女性の恐怖も考えずに女子トイレに侵入してくる雄姿はまさに「男しぐさ」ですね!!

森元太 トランス女性のケアを女性に押し付けるな! 男子トイレを安心して使えるように男性が努力すべきです。#私たち男性はトランス身体男性が安心して男子トイレを使えるように努力します #ForXX

金魚姫 トランス女性は生得的に男性である時点で生得的女性が受ける性被害を受けないんだから女子トイレを使う権利ないですよ

これらのインターネット上の「書き込み」とされているものは、制作者側で作成されたものであると推察することができますが、以下の点についてお尋ねします。

(a) 上の5つの「書き込み」における冒頭の2つ(「わきまえない桜もち」「むいむい」)において「まじキモイ死んでほしい」とか「氏ね!!!」という脅迫的文言が書かれていますが、トランスジェンダーに対してそれに類する脅迫的言辞が実際にインターネット上にあったと貴人権局で確認されておりますでしょうか? もし確認されている場合はその具体例の提示をお願いします。

(b) もし確認されていない場合、実際には存在していないそのような脅迫的文言をわざわざ作文することは、存在しない差別を捏造することになるのではありませんか? もしそうはならないとお考えなら、その理由をご説明ください。

(c) 大阪府の人権局という公的機関が、実際には存在しない差別的書き込みがあたかも実在したかのように描き出す動画を公式に支援し許可したことは重大な問題であると私たちは考えますが、この点に関する人権局としての考えをお聞かせください。

(d) 存在しない差別憎悪表現を作り出して作品に入れ、女性を差別者扱いすることこそ、女性差別を促進することなのではありませんか? 大阪府の公式機関が積極的に女性差別を促進することは重大な問題であると私たちは考えますが、貴人権局としての考えをお聞かせください。

(e) 残る3つの「書き込み」(「まいまい」「森元太」「金魚姫」)についてですが、これらの書き込みがいかなる意味でトランスジェンダーに対する差別に相当するのか、具体的にご説明ください。

(f) 最後の「金魚姫」の「書き込み」における「トランス女性は生得的に男性である」という文言について、これは科学的事実であるとお考えですか、それとも科学的事実に反するものとお考えですか? もし後者の場合、その根拠となる科学的知見についてご説明ください。

3.この動画は、身体が男性のままのトランスジェンダーが女子トイレを使うことを正当化する内容のものであると推察できますが、貴人権局は、「身体が男性のままであっても女子トイレを使うこと」は正当であるとお考えですか? そうお考えになる場合、その理由についてご説明ください。また、それに対して女性が抱く不安や恐怖心、被侵襲感は、トランスジェンダーに対する差別であるとお考えですか? もしそうお考えになる場合、その理由についてもご説明ください。

4.インターネット上では、トランスジェンダーに対する脅迫的文言ではなく、逆にトランスジェンダーあるいはそのアライと称する人々による、女性への脅迫的文言が少なからず存在しています(もしその具体例を知りたいということであれば、非公開の形で提供させていただきます)。女性に対するこれらの脅迫的文言は女性差別を構成するとお考えですか? もしそうでないと考えるなら、その理由についてご説明ください。またそれが女性差別で人権侵害を構成するとお考えになる場合、貴人権局はこの問題について何らかの対処をする考えはありますか? ない場合、その理由についてご説明ください。ある場合、具体的にどのような対処をするつもりなのか、具体的に説明してください。

 以上の質問に対して、3月25日までに公開の形でか、あるいは私たちの会への電子メールという形での回答を求めます。なお、回答されたものは、私たちのウェブサイト(https://no-self-id.com/)で公開させていただきます。また、期日までに回答がなかった場合も、そのことを私たちのサイトで報告させていただきます。

2022年3月10日

No!セルフID 女性の人権と安全を求める会

共同代表 石上卯乃、桜田悠希


この質問状は郵送いたしました。

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