渋谷区の女性専用トイレをなくす動きに断固抗議します

東京都渋谷区長 長谷部 健 様

東京都渋谷区公園課公園維持係様

 すでに各種報道にあるように、渋谷区議のすだケン(須田賢)氏のあるツイートをきっかけに、渋谷区の新しい公衆トイレの問題が、ツイッターやネットメディア上で大きな話題になっています。すだ氏は2023年3月6日に、渋谷区の新しい公衆トイレの写真とともに、次のようにツイートしました。

「幡ヶ谷で新しくできたトイレです。本日、近くに所用があって写真をついでに。誰でもトイレが2つ、と男性用トイレ。渋谷区としては女性トイレを無くす方向性なのですが、私はやはり女性用トイレは残すべきだと思います。皆さんはどうお考えでしょうか。」

 このツイートはたちまち何万とリツイートないし「いいね」され、大きな話題となり、現時点で2600万回以上の表示回数になっています。このトイレは、渋谷区自身の説明によると、公益財団法人日本財団と渋谷区とが協働して進めている「THE TOKYO TOILET」というプロジェクトの一環だとのことです。反響の大きさに驚いた渋谷区は、翌3月7日付で次のように回答しました。

Twitter上で渋谷区議会議員から「渋谷区としては女性トイレをなくす方向性」とのツイートがありましたが、渋谷区では今後のトイレ整備について女性トイレをなくす方向性など全くございません。

 しかし、これはまったく回答になっていません。すだ氏が紹介した写真のトイレ(渋谷区幡ヶ谷3丁目のトイレ)には、実際に女性専用トイレが設置されていないのです。それだけでもすでに女性の安全と尊厳を脅かし、性犯罪を起こしやすい環境を作るものであると言わざるをえません。にもかかわらず、渋谷区の回答はそのことについて反省の意を示すどころか、このトイレについて「性別に関わらず誰もが快適にご利用いただける環境が整った」と開き直っているのです。女性専用トイレがなくても「性別に関わらず誰もが快適にご利用いただける」のなら、今後設置する公衆トイレに関しても女性専用トイレをあえて設置しなくてもかまわないことになるでしょう。また実際、同じプロジェクトの過去のトイレにも複数、女性トイレが設置されていないものがあります(例1例2)。言葉はどうあれ、事実上、「今後のトイレ整備について女性トイレをなくす方向性」を有しているとみなされて当然でしょう。

 性差別と性暴力とが蔓延しているこの日本社会において、女性専用トイレは、女性が相対的に安全性を感じることのできるごくわずかな公的空間の一つです。盗撮や性的暴行をはじめとする性犯罪の多くは共用トイレで起こっています。また女性の尊厳と羞恥心、衛生上の必要性という観点からしても、女性専用トイレは不可欠です。現在でも女性専用トイレは著しく不足しており、女性専用トイレを減らすことなど絶対にあってはならないことです。また、少なくとも、男性専用トイレを設置しながら、女性専用トイレを設置しないことは、日本国憲法第14条に明記された性別にもとづく差別禁止規定に反するものです。

 私たちに必要なのは、安全で、使用者の尊厳が守られ、使いやすいトイレであって、それと無関係な「おしゃれ」トイレではありません。また、渋谷区が示した図を見るかぎりでは、車いすで出入りするのも非常に不便のように見えます。実際、現地を取材した記者の感想でも「これでは車椅子の人は動きづらいのではないか」とあります。女性だけでなく、車いす使用者のこともないがしろにしたトイレのようです。

 別の記事によると、このトイレを設計したのは、東京大学生産技術研究所のマイルス・ペニントン教授と同大学の「DLXデザインラボ」のようですが、その記事に掲載された写真を見るかぎりでは、全員が男性で、かつ車いすの非使用者のようです。女性も使用する公衆トイレを設計する人々が男性だけで構成されていることも、性差別的であると言わざるをえません。

 以上のことを踏まえて、私たちは緊急に以下の3点を渋谷区に要求します。

 1.幡ヶ谷の新しい公衆トイレをただちに改修して、女性専用トイレを複数設置すること。そして、 犯罪予防学にのっとって、男性専用トイレの入り口と女性専用トイレの入り口をできるだけ離すことで、安全性を確保すること。

 2.「THE TOKYO TOILET」プロジェクトで企画・設置した過去のトイレもすべて、女性の安全と尊厳、男女平等という視点から見直し、必要な改修を行なうこと。

 3.今回のプロジェクトを含めて公衆トイレを設計・設置する場合、企画者・決定者の半数を必ず女性にし、その中に車いす使用者も含めること。

 女性の生存権、尊厳、平等権を踏みにじって「おしゃれさ」や「新しさ」を追求するのは、女性をまともな人間として扱っていない証拠です。どうか私たち女性を平等で尊厳ある人間として認めてください。そしてそのことを渋谷区による現実の施策の中で示してください。

2023年3月10日

No!セルフID 女性の人権と安全を求める会

共同代表 石上卯乃、桜田悠希

メールアドレス:no.self.id.jp@gmail.com

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