東京トランスマーチ2022に賛同と連帯のメッセージを送った政党・個人への公開質問状

社会民主党 党首 福島みずほ様

日本共産党委員長 志位和夫様

立憲民主党代表 泉健太様

れいわ新選組代表 山本太郎様

緑の党グリーンズジャパン共同代表 中山均様、松本なみほ様、尾形慶子様、橋本久雄様

新社会党中央本部委員長 岡﨑宏美様

国民民主党代表 玉木雄一郎様

新宿区議会議員 高月まな様

愛媛県松山市議会議員 わたなべひろゆき様

北海道議会議員 渕上綾子様

 みなさまの日頃の奮闘に敬意を表します。言うまでもなく、トランスジェンダーであることを理由とした進学・就職・昇進・昇給・住居などのさまざまな社会的差別はあってはならないことであり、そうした差別の撤廃を求めることは当然であると私たちは考えています。

 さて、今年の11月12日に新宿で「東京トランスマーチ2022」が取り組まれ、1000人近い当事者とアライが参加したと報道されています。上に列挙した政党と議員のみなさまは、この東京トランスマーチに賛同と連帯の挨拶を送っており、東京トランスマーチのサイトに掲載されています。

 このトランスマーチにおいて2つの大きな問題が生じました。

 一つは、このマーチの賛同団体の一つでもあり、このマーチの開催に中心的役割を果たしたフリーター全般労働組合(以下、フリーター全般労組と略記)のTwitter公式アカウントが、「ターフや反売買春フェミを踏みしだいてこれからも我々は生きていく」と投稿したことです。言うまでもなく、日本では売春防止法によって売買春は法律で禁止されており、国際的に見ても、1949年に国連総会で採択された人身売買禁止条約は、その第1条で「売春を目的として他の者を、その者の同意があった場合においても、勧誘、誘引すること」と「本人の同意があっても、その売春から搾取すること」を禁じており、第2条は売春店の経営を禁じています。国内的にも国際的にも売買春は禁止されているのです。また法律とは別に売買春が(主として)女性の性と身体を搾取する行為であるのは明らかであり、それに反対することはフェミニストだけでなく、良識あるあらゆる人にとって当然のことです。にもかかわらず、トランスマーチの賛同団体であるフリーター全般労組の公式Twitterアカウントは、売買春に反対する「フェミ」(フェミニストの意味)を「踏みしだく」と宣言しているのです。「踏みしだく」とは辞書によると、「踏みにじる、踏み荒らす、足で強く踏んでいためつける」という意味です。売買春に反対するフェミニストを「踏みにじる」「踏み荒らす」「いためつける」と宣言しているわけです。これは女性に対する暴力あるいは暴力的な脅迫を公然と表明するものであり、絶対に許されるべきものではありません。

 また、このツイートは「ターフ」をも「踏みしだく」と宣言しています、この「ターフ」とは、後でも見るように、「Trans Exclusionary Radical Feminist(トランス排除的ラディカル・フェミニスト)」の頭文字をとって「TERF」(ターフ)と呼んだものであり、トランスジェンダリズムないし性自認至上主義に同意しないフェミニストに対する蔑称として用いられています。この問題については、次の第2の問題とも共通するので、以下にまとめて論じます。

 第2に、トランスマーチの参加者の一人が「Fuck the TERF」というプラカードを掲げて行進していたことが、他の参加者による複数の写真で確認できます。これは一参加者のプラカードですが、トランスマーチの主催者自身がこのプラカードについて正式に見解を出し、「全く問題ありません」と断言しています。したがって、「Fuck the TERF」というスローガンはトランスマーチ全体として「全く問題ない」ものとみなされたということです。

 このスローガンには2つの重大な問題があります。まず、「TERF」という蔑称で呼ばれた女性やフェミニストを名指しして「Fuck(犯す、レイプする)」と表現していることです。もちろん、罵倒語としての「fuck」にはさまざまな意味がありますが、特定の人を目的語として「Fuck ~」と言った場合には、当然にも、その相手に対する性的威嚇、性暴力の脅しといった意味を持つのは絶対に避けがたいものです。そして、今回、その対象とされているのは、日々、性暴力の脅威にさらされている女性という集団なのです。トランスマーチという、本来は多様性と人権を尊重する平和的デモ行進において、そのようなプラカードが堂々と掲げられ、それが主催者からたしなめられるどころか、「全く問題ありません」とされるのは、まさに異常であると言わざるをえません。

 次に、「TERF」という表現が持つ問題です。すでに述べたように、「TERF」というのは、「Trans Exclusionary Radical Feminist」の頭文字を組み合わせたものですが、この「TERF」という用語は世界の一部のトランス権利活動家たちやそのアライの人々によって、このレッテルを貼られた女性たちに対するあらゆる暴力、脅迫、レイプ、拷問、非人間化、虐殺、等々を表現するのに常に用いられているものです。「Kill TERFs」「Punch TERFs」、「ターフは人にあらず」、そして「Fuck TERFs」等々、です(今回のプラカードでは「Fuck the TERF」という文法的に奇妙な表現になっていましたが、それは大きな問題ではありません)。このような文脈で、そして女性を暴力的に脅しつけ、レイプや虐殺を示唆して沈黙させ、排除し、従わせるという目的のために頻繁に用いられているのが、この「TERF」という用語なのです。

 しかし、このレッテルを貼られる女性たちは、一部の偏った人たちではありませんし、問題のある女性たちでもありません。女性が性被害に遭う危険性を高めたくないと考える、ごく普通の女性たちです。しかし、そのために女性専用のトイレや浴室、更衣室、シェルターなどを維持したいと主張をすることが、「TERF」であり差別者であるとされ、非難の対象にされているのです。

 このトランスマーチが行なわれた日は同時に、内閣府が定めた「女性に対する暴力をなくす運動」(11月12日から25日まで)の開始日でもありました。そうした時期に、「ともにあるためのフェミニズム」などのプラカードも掲げて行進されたトランスマーチにおいて、自分たちと意見の異なるフェミニストや女性に対して性暴力的な威嚇を意味するプラカードを掲げ、それを主催者が全面的に擁護するとは、驚きです。

 以上の点を踏まえて、以下に、この東京トランスマーチ2022に賛同と連帯のあいさつを寄せたすべての政党と議員のみなさんに、以下の公開質問をしますので、12月10日までにemailにて当会no.self.id.jp@gmail.com にご回答くださるようお願い申し上げます。

1.貴党ないしあなたは、今回の東京トランスマーチ2022においては、賛同団体の一つがTwitterの公式アカウントで「ターフや反売買春フェミを踏みしだいて」とツイートしたことはご存じでしたか。

2.ご存じだとしたら、あるいは、今回の公開状により知ったとしたら、それはトランスマーチにふさわしいものであるとお考えでしょうか、それとも、それはトランスマーチにふさわしくない暴力的なものであるというお考えでしょうか。その具体的な理由を添えて、お答えください。

3.貴党ないしあなたは、売買春に賛成でしょうか、それとも反対でしょうか。その具体的な理由を添えて、お答えください。

4.もし売買春に賛成ならば、売春防止法および人身売買禁止条約に反する立場を表明することになりますが、それでも問題ないというお考えでしょうか。またもし売買春に反対ならば、貴党ないしあなたも「反売買春フェミ」の範疇に入ることになるので、トランスマーチの賛同団体によって「踏みしだかれる」対象となりますが、その点についてどのようにお考えかお教えください。

5.貴党ないしあなたは、「Fuck the TERF」というプラカードが今回の東京トランスマーチ2022において掲げられ、主催者が「全く問題ありません」と擁護した事実について、ご存じでしたか。

6.ご存じだとしたら、あるいは、今回の公開状により知ったとしたら、それはトランスマーチにふさわしいものとお考えでしょうか、それともふさわしくないとお考えでしょうか。具体的な理由を添えて、お答えください。

7.以上の問題について、これらのツイートやプラカードがトランスマーチにふさわしくないと判断されている場合、この問題に関して主催者に抗議する予定はありますか。予定がない場合、その理由は何ですか。

8.東京トランスマーチは来年も開催されると思われますが、貴党ないしあなたは、来年も賛同と連帯のあいさつを送る予定ですか。予定がある場合もない場合も、具体的な理由を添えてお答えください。

2022年11月15日

No!セルフID 女性の人権と安全を求める会

共同代表 石上卯乃 桜田悠希


※11月18日にご指摘いただき、「 国民民主党代表 玉木雄一郎様 」追記いたしました。ご指摘感謝いたします。

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