【緊急声明】総選挙に向けて与野党と候補者のみなさまに訴えます――私たち女性の声に耳を傾けてください

(こちらは声明文のPDFです。内容にご賛同いただける方はご自由にダウンロードしてお使いください。ただし文章の改変等はご遠慮ください。又、ご自身の責任においてお使いいただきますよう宜しくお願い申し上げます。)

  

  

総選挙に向けて与野党と候補者のみなさまに訴えます――私たち女性の声に耳を傾けてください

 10月31日の総選挙投票日まで、すでに1週間を切り、選挙戦は終盤に入っています。今回の総選挙は政権交代の可能性も示唆されており、現在の与党だけでなく、野党とその候補者のみなさまも、かつてなく国の将来と国民全体に責任を負う立場にあります。私たち「No !セルフID 女性の人権と安全を求める会」はこの局面におきまして、与野党と候補者のみなさまにどうか女性の声に耳を傾けてほしいとの思いを込めて、この緊急声明を出すことにしました。

 私たちの会は今回の総選挙にあたって、各政党に対して公開アンケートを実施しました。

質問は主に2つ

  • 10人以下の小規模事業所における女性専用トイレの廃止問題
  • 与野党がともに制定を目指しているLGBT新法(理解増進法ないし差別解消法)における性自認の問題

 このアンケートに対しては、日本維新の会、日本共産党、自由民主党、社会民主党のそれぞれから回答をいただきましたが(順番は回答が早かった順)、与党の一角を担う公明党、野党第一党であり今回の総選挙で政権交代をめざしている立憲民主党からは回答をいただくことができず、また国民民主党とれいわ新選組からも回答をいただけませんでした。

 総選挙にあたって、各政党がどのような政策を持っているか、また市民団体からの公開質問に対してどのような回答で応えるかは、国民にとって総選挙での投票を決める際の重大な判断材料になります。ところが、公明党や立憲民主党など4つの政党はそもそも回答を寄せることなく、市民からの質問をないがしろにする態度を取りました。私たちはこのことを遺憾に思い、未回答の諸政党に強く抗議したいと思います。

 きちんとご回答くださった政党のみなさまには、この場で改めて感謝をいたします。しかしながら、その回答にはいくつかの懸念すべき点がありました。

小規模事業所のトイレ問題に関して

 女性専用トイレがなくならないように努力するとの立場がおおむね表明されていますが、そもそも厚労省からの省令改定案が出た時に何らかの反対行動や抗議などをした政党があるとは私たちは聞いておりませんし、各政党の回答にもその旨の発言はありませんでした。この小規模事業所のトイレ問題に関しては、インターネットで話題になるや多くの女性たちが不安と反対の声を上げ、パブリックコメントにごく短期間に約1500件もの声が寄せられ、その大半が反対の声だったと報じられています。なぜこの段階でどの政党も意見を述べなかったのでしょうか。なぜ厚労省に働きかけようとしなかったのでしょうか。

 現在、公衆トイレや施設のトイレも含めて、トイレの共用化が着実に進行しつつあります。このような共用化を学校でも推し進めた海外の国では、女子生徒がトイレに行くのを我慢したり、不登校になったりするという事態も生じています。安全な女性専用トイレの確保は、女性の就労と教育にとって不可欠であり、女性の人権のかなめとも言うべき課題です。

 同じく、第2の質問である性自認の問題に関しても、私たちの不安はぬぐえません。

 たとえば、共産党からの回答にあった「病理モデル」から「人権モデル」への転換という文言についてです。「人権モデル」とは、性別適合手術を受けなくとも戸籍上の性別変更を可能にするべきであるというものです。聞こえはいいですが、それは性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(GID特例法)の趣旨とその制定の経緯を誤解するものです。GID特例法は、強い身体違和があり、性別適合手術を終えても戸籍変更ができない人々の生活上の困難を軽減するために制定されたものであって、自分が女性であるないし男性であると認識する人々が、性別を自由に変えられるようにすることを目的として制定されたものではありません。

 現在、「性自認」という言葉が独り歩きし、「性自認に基づく差別は許されない」という口実で、多くの女性たちの不安の声が差別だとして封じられつつあります。私たちは質問2の④で、「プロスポーツや高度な技術を競うアマチュアスポーツにおいて、性自認が女性であるが身体が男性のままの人が女子スポーツに参加できないこと、あるいは、そういう人が女性用トイレや女性用公衆浴場にはいれないこと」は、「性自認を理由とする差別」にあたるのかどうか尋ねましたが、それは差別にあたらないと明言してくれた党は、自民党を含め一つもありませんでした。回答を差し控えるとか、何が差別にあたるかは今後の議論にゆだねられる、など無責任な回答が目立ちました。

 何が差別であるのかが曖昧なまま、性自認を理由とする差別の禁止ないしそれに類する文言の入った法律が制定されたならば、さまざまな施設において性別の区分ルールが性自認を中心としたものになり、女性たちの不安の声が差別だとして封じられてしまうのではないかと、私たちは大きな危惧を抱いています。

 それが単なる杞憂でないのは、そうしたルール変更がすでに進んでいる海外のいくつかの国で実際に深刻な問題が生じているからです。

 たとえば、イギリスやカナダでは、刑務所に収監された男性の犯罪者が「自認は女性だ」と言い出して、女子刑務所に移送された結果、そこでレイプ事件を起こした事例がいくつも報告されています。カリフォルニア州の家族向けスパでは、男性器を備えた人が自認が女性だという理由で女性専用スペースを使用することが認められました。それに抗議した女性に対して、逆に差別者だとする糾弾運動まで展開されました(WiSpa事件)。後日、この「女性を自認」していた人物が前科のある性犯罪者であったことがわかっています。

 今回の選挙では、とくに野党を中心に「ジェンダー平等」という言葉が盛んに用いられています。私たちはもちろん、男女間の差別や不平等が解消され、性別や性自認に関わりなくすべての人々の尊厳と権利が尊重される社会の実現を望んでいます。しかし、「男女平等」と言われず、「ジェンダー平等」という表現がなされることで、女性たちが現在置かれている深刻な差別と貧困、性的侵害の深刻な現状が曖昧にされるのではないかと危惧しています。男女間の賃金格差にしても、女性に対する痴漢やセクハラなどの性暴力にしても、状況はまったく改善しておらず、ますます深刻になっています。

 与野党とすべての候補者のみなさん、女性は有権者の半分を占めています。しかし、私たち女性の声、権利、安全はいつも、「より大きな」(とされている)問題の前に二の次とされてきました。しかし、私たちは痛みを感じる生きた人間です。いつまでも黙っているわけではありません。どうか私たちの声に耳を傾けてください。

そして、この党なら安心して投票ができると思わせるような政策と姿勢を見せてください。

 

 

2021年10月25日

No! セルフID 女性の人権と安全を求める会

共同代表 石上卯乃、桜田悠希

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